『クソすばらしいこの世界』
2013年 キングレコード
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 朝倉加葉子
撮影 木津俊彦
音楽 森野宣彦
出演 キム・コッピ/大畠奈菜子/北村昭博/しじみ/甘木ちか/阿部友保/ジュリアン・カーティス
《解説》
国家間、人種間の溝は決して埋まることはない
アメリカを舞台に繰り広げられる和製スラッシャー・ホラー これが長編デビュー作となる女性監督、朝倉加葉子が血しぶきを派手に飛び散らす激しいバイオレンスと共にドラマを紡ぎ出す
国籍の異なる者たちの間に横たわる、深く暗い溝を浮き彫りに、「息もできない」で注目された韓国の新進女優キム・コッピがヒロインを務め、熱演を披露する
《物語》
韓国人留学生のアジュンは日本人留学生の多香子の誘いで他の日本人留学生らとロサンゼルス郊外の田舎でのキャンプに参加
アジュンは初対面の雅則、謙次郎、エリカ、ひろのらがまったく英語が話せない事に驚きを隠せない 日本人留学生たちは普段は日本人同士で過ごしまったく英語の勉強をしていない
多香子以外とはコミュニケーションが取れずにストレスが溜まるアジュン タクシーを呼んで帰ろうと思っても携帯は圏外
アジュンは誰かの穴埋めで割り勘要員だったと気付き、酒やドラッグに溺れて遊んでいる日本人に苛立ちを感じる
多香子にこんな有り様で授業は大丈夫なのか聞いてみると雅則の父親が学校に多額の寄付をしているから私たちは大丈夫、就職も経歴に留学していたと書ければいいと言う多香子に呆れてしまうアジュン
真面目なアジュンは日本人たちに溶け込めない アジュンはいい大学に入り、いい会社に入り、母を楽させてあげたい
しかしそんな彼らに殺人と強盗を生業にする凶暴な白人兄弟のヘンリーとビクターが殺人の現場を見られたと勘違いし、後を追って来た
まずはひろのを拉致して殺害したヘンリー ビクターはエリカを追うが途中でもみ合いとなり、坂を転げ落ちたことで2人の人格が入れ代ってしまう
エリカの姿のビクターはアジュンに近づき元に戻る方法を教えろと迫る
ビクターの死体を見付けたヘンリーは怒り狂い、コテージへとやってきた 謙次郎をバラバラにして殺害し、アジュンとエリカを襲う
エリカは必死に自分がビクターだとヘンリーに訴えるも殺されそうになり、逆にヘンリーを殺害 エリカとなったビクターは再び殺戮を開始する
《感想》
まず思ったのは新人女性監督が作ったとは思えないくらいの強さとでも言いましょうか、女性特有の繊細さとかより大胆でした
初長編作品がロサンゼルスでの撮影 恵まれてるように聞こえますが予算も時間もギリギリで大変だったようです
ロサンゼルスの片田舎で命を狙われる留学生たちの恐怖体験を容赦ない人体破壊描写満載で描いています
とても新人女性監督が作ったとは思えませんでした 脚本も自分で書いているので好きなんでしょうね 音声解説でもホラー作品をいろいろと解説してました
もともとは日本人留学生でも優等生の日本人を主人公だったようですが、「息もできない 」のキム・コッピにオファーしたところ脚本を読んでOK 監督は主人公を韓国人留学生に変更したそうです
でも監督のこの変更は正解だと思います なんとなく日本人と韓国人の微妙な空気感が醸し出されていました 歩み寄る韓国人とよそよそしい日本人
キム・コッピは他の俳優と比べて上手でしたよ それに日本人よりおしとやかで可愛かったです 日本人は酒とドラッグに溺れてるんです
これは別の日本映画に出演した時のインタビュー時のオフショットでしょうか? 個人的に大女優になって欲しいと思う逸材です
韓国だけでなくいろんな国の映画に出て国際女優となるかな 本作でも血まみれになって雪の中頑張っていましたよ
なぜか「ムカデ人間 」の北村昭博も出演 彼も国際俳優なんでしょうか? うるさい日本人役でした(笑)
映画後半でビクターとエリカの人格が入れ代るのですが、そのエリカ役の大畠奈菜子が金髪でメイド服で大暴れ これはカッコ良かったです
彼女をフューチャーした作品があってもいいかな もっと見てみたいもん それに最初に殺されるしじみも良かったです 叫び声なんか感心したな~、それに襲われてる感が素晴らしかった
日韓米のアイデンティティ入り乱れる、鮮血の大惨事が幕が開ける…! それが『クソすばらしいこの世界』です。
朝倉奈菜子監督の次回作もちょっと楽しみではあります