『蝿男の恐怖』
1958年 アメリカ
《スタッフ&キャスト》
監督 カート・ニューマン
原作 ジョルジュ・ランジュラン
脚本 ジェームズ・クラヴェル
撮影 カール・ストラス
音楽 ポール・ソーテル
出演 ヴィンセント・プライス/パトリシア・オーウェンズ/アル・ヘディソン/ハーパート・マーシャル/キャスリーン・フリーマン/チャールズ・ハーバート
《解説》
人体実験から、頭と腕だけが蝿になった男 思わず目を覆う、戦慄のエンディング!
ジョルジュ・ランジュランの名作「蝿」を原作に、ミステリアスなストーリー展開とショッキングな映像で、1950年代のSF映画全盛時代に衝撃を呼んだSF恐怖映画の古典的名作
物質転送装置の実験の最中、偶然にも装置の中に紛れ込んでいた一匹の蝿と融合し頭と手が蝿と化してしまった科学者の恐怖を描いた戦慄のクラシック・ホラー
《物語》
ドランブル・ブラザーズ電子工業で警備員が物理化学者のドランブル・アンドレが圧搾機械で体を潰された死体を発見 その現場から逃走するアンドレの妻エレーヌが目撃された
エレーヌは義兄のフランソワにアンドレを殺したと電話で告白 フランソワは友人のシャラス警部と共に現場でアンドレの死体を確認
その後、2人はエレーヌの自宅へ急行 そこでエレーヌは自分がアンドレを殺したと言い、精神に異常があるように装っている それに何故か蝿に敏感になっていた
ある日、エレーヌの息子フィリップに頭の白い蝿を捕まえた話をされたフランソワはその話をエレーヌにした エレーヌはフィリップの為に異常者を装っていたのだ 殺人で絞首刑より病院送りの方がいいだろうと エレーヌはその蝿を殺すことを条件に全てを話し出した
数か月前、アンドレに物質を瞬時に別の場所に移動させる物質転送装置を発明 エレーヌの目の前で物質を光の速さで移動させた これは世界を変えるほどの大発明だ
しかしまだ完璧ではなくアンドレは研究に没頭していた 飼い猫で実験するも失敗、猫は分子レベルで彷徨っている
思考錯誤の末、彼は実験に動物実験に成功 そして遂には自身の体を使って人体実験を行った しかしそれ以来、アンドレは研究室から姿を見せなくなった
研究室から出てこないアンドレを心配してエレーヌが研究室に行くと黒い布を被ったアンドレが、実験に失敗し恐ろしい事になったとメモを見せた
エレーヌはもう一度アンドレに転送実験をさせ、黒い布を取るとそこには頭と片腕が蝿と化したアンドレいた ショックのあまり気を失ってしまうエレーヌ
アンドレは頭が人間の蝿を捕まえて再度、転送実験をして元に戻そうと計画 しかしアンドレは徐々に自分の意識が蝿になっていることに危惧
そしてその研究の全てを破棄し、自分の痕跡を残さないようエレーヌに頼み、頭と腕を圧搾機械で潰させ死を選んだのだ
《感想》
誰もが知っているSFホラー映画の古典 圧搾機械で頭部と腕を押し潰された科学者の変死体から始まり、回想シーンとなっていく それはこけおどしのホラー映画とは一線を画す作りは秀逸
自身を使った人体実験で悲劇に見舞われ、なかなか見せない蝿男の演出は見応えありました いざその姿を見せた時のショッキングな事 当時の人はビックリしたでしょうね
この映像も凝ってますね 蝿から見た映像です 最初は恐怖に震える妻ですが夫を助けたいが為に奔走する姿は愛に溢れてますね
蝿男となっても妻を愛しているアンドレ 言葉が発せられないアンドレは黒板に愛していると書く姿は悲し過ぎます
エレーヌを演じるのがパトリシア・オーウェンズ これは当時のピンナップですかね?
クローネンバーグによるリメイク版「ザ・フライ」を本作のテーマを受け継ぎ、あまりにも悲劇的なラストも深い余韻を残します
アンドレが死んだ後に頭が人間の蝿が蜘蛛の巣に掛り、「ヘルプミー」と叫び蜘蛛に食べられちゃうんです それをシャラス警部が石で蜘蛛ごと潰しちゃうんです
たしかにショッキングなラストで「ヘルプミー」の叫び声は耳から離れません それくらい強烈です シャラス警部はエレーヌの話を信用してなかったのですが、この瞬間にエレーヌの殺人からアンドレの自殺に結着
最初の転送装置でお皿を転送するんですけど、それが日本製なのがなんか時代を感じさせます それが失敗して反転しちゃいます
この辺は改良したのに、なんで2つの物質が入ってたら融合しちゃうの?そこは科学者としてはダメなとこなんかな? アンドレも言ってましたが神の領域に踏み込んでしまったからの罰なのでしょうか
ちなみにアンドレの兄役だったヴィンセント・プライスをフューチャーした続編「蝿男の逆襲」「蝿男の呪い」が製作されました それは観てないんですけどね
ジョルジュ・ランジュランの名作を映画化したSFホラー それが『蝿男の恐怖』です。
1958年にこのカラー作品はかなりレベルが高いです 総天然色でしたね(笑)