『凍える牙』
2012年 韓国
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 ユ・ハ
原作 乃南アサ
撮影 コン・ピョンジェ
音楽 キム・ジュンソク
出演 ソン・ガンホ/イ・ナヨン/イ・ソンミン/イム・ヒョンソン/チョン・ジン/チャン・イノ/チョ・ヨンジン/ナム・ボラ/クォン・テウォン/パク・ソヌ/カン・プン/チョン・ミンソン/イ・ミナ/ト・ギソク
《解説》
孤独の欠片を拾い集め、声なき叫びを追え
第115回(1996年上半期)直木賞に輝く乃南アサの同名人気小説を韓国で映画化 難事件の解決に挑む刑事コンビの活躍をスリリングに描いた秀作クライムサスペンス
この屈指の人気ベストセラー小説を韓国で完全映画化 ベテラン中年刑事と新米の美人女性刑事としてコンビを組み、連続殺人事件の謎に立ち向かう2人の主人公を、ソン・ガンホとイ・ナヨンが、持ち味を存分に発揮しながら好演
《物語》
ソウルで停車中の車の中にいた男が突然発火、車ごと炎上し死体は黒焦げ 自殺と見られていた
現場を訪れた中年刑事のチョ・サンギルは同期の班長から元白バイ警官の若き女性刑事チャ・ウニョンと捜査を行うよう命じられる 出世も出来ずひねくれているサンギルは渋々了承

死体の検証の結果、太ももには犬に噛まれた痕があり、尿から覚醒剤反応 それにベルトのバックル内から点火装置があり、引火性の強い化学物質が仕込まれていた つまり殺人事件だ
ヤクの売人から被害者の経営する塾の居場所を聞き出したサンギルはウニョンと内部を調査 隠し扉の奥には怪しい部屋がたくさんあり、被害者が未成年の少女たちを働かせ薬物中毒にしていたことを突き止める

サンギルは昇進欲から上部には報告せず、深刻性にもかかわらず単独捜査をするサンギルにやむを得ず従うウニョン

そんな中、新たな事件が発生 路上で大型犬に襲われてナム・サンフンという男が死亡 麻薬と未成年買春の前科があり、自宅から第一被害者との写真が見付かりオ・ギョンイルだと分かった

首の傷痕から採取した動物の毛を分析すると狼だと判明 サンギルとウニョンは動物関係者を捜査し、犬のトレーナーから狼犬の交配の話しを聞き、裏ブリーダーに接触
そこで狼犬をミン・テシクという闘犬賭博に関わっている元ヤクザが浮上 サンギルとウニョンはテシクの元恋人のミンジョンが出入りする売春組織への手入れを決行
テシクだと思った男はミンジョンの新しい恋人でウニョンは肋骨を折るケガを負い、そのウニョンの目の前でミンジョンは大型犬に襲われて死亡


捜査会議で今は実業家となったテシクが過去の性犯罪をもみ消そうとして元仲間のギョンイル、サンフン、ミンジョンを殺害したという説が有力視される
入院中のウニョンは退院後には内勤か移動になる予定 しかしウニョンは病院を抜け出し独自の捜査を開始し、元警察官で犬訓練士のカン・ミョンホの家に向かう
カン・ミョンホの娘ジョンアはかつて少女売春を強要され薬漬けにされた上に妊娠させられ精神病院送りにされてしまった ミョンホはその復讐に狼犬のチンプンを調教し殺人犬へと完成させた
しかしその家でウニョンはチンプンのいる部屋にミョンホに閉じ込められ、何者かにミョンホは襲われて家に火を放たれてしまう ウニョンとミョンホにジョンアが家の中にまだいたが…

《感想》
人体発火現象を追うのかと思ったら今度は狼犬と掴みにくい展開でどうなるのかと思ったら悲しい展開になるヒューマンドラマでした
当たり前ですけどこの狼犬が物語を引き締めてくれます ウニョン刑事が犯人の家で狼犬と同じ地下室に閉じ込められるんですけど狼犬は襲うことなく、結果的にはウニョンを助けるんです
幸せに暮らしていた父娘だったんですけど、娘のジョンアが酷いことになり父親のミョンホが復讐するんですが一筋縄では済まないです

獰猛に喉元に噛みついて殺すシーンは痛そうでしたし残酷でした 本当にこの狼犬は恐ろしい姿と家族と戯れる姿と両方を見せられて主人公同様にどちらが正しいのか迷ってしまいます 保護か処分か?
主人公サンギルを演じるのは「殺人の追憶 」「渇き 」の名優ソン・ガンホ 本当にくたびれた役をやらせると上手いですね 出世できずにひねくれて同期の班長に新人女性刑事を押し付けられて、その上に女であるウニョンを疎ましく思います

韓国は女性軽視は日本より酷いらしいですね 「女性刑事は顔で選ぶのか?」とかサンギルとウニョンが聞き込みから帰ると「デートしてきたのか?羨ましい~」とか それに女だから雑用しろとかパワハラが凄いです
そのウニョンを演じるのがイ・ナヨンです オダギリジョーと共演した「悲夢 」が印象的な彼女です 美人ですが幸薄い表情で男の刑事に殴られるし、犯人にもボコボコにされるわで散々ですよ それもまた良いんですけどね


それに元白バイ警官なのでバイクを駆って捜査をする姿はワイルドです 運転姿が革のツナギでまたカッコイイんです

乃南アサの原作で日本でも2001年に天海祐希、2010年に木村佳乃で2度ドラマ化されています 映画化も熱望されていましたが、実現させたのは韓国映画でした がっかりする日本原作やリメイクがありますが本作は中々の出来でした ちょっと長いけどね
直木賞に輝くベストセラー小説の映画化、ついに実現!韓国映画界が挑んだ心揺さぶるクライム・サスペンス それが『凍える牙』です。
原作は読んでないのですがこの複雑な展開は読んでみたくなりました