『女は二度決断する』
2017年 ドイツ
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 ファティ・アキン
脚本 ハーク・ポーム
撮影 ライナー・クラウスマン
音楽 ジョシュア・ホーミ
出演 ダイアン・クルーガー/デニス・モシット/ヨハネス・クリシュ/サミア・シャンクラン/ヌーマン・アチャル/ヘニング・ペカー/ウルリッヒ・トゥクール/ラファエル・サンタナ/ハンナ・ヒルスドルフ/ウルリッヒ・ブラントホフ/ハルトムート・ロート/ヤニス・エコノミデス/カリン・ノイハウザー/ウーベ・ローデ/アシム・デミレル/アイセル・イシジャン
《解説》
砕かれた愛、癒えぬ悲しみ、この魂が私を突き動かす
「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」「ソウル・キッチン」でカンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭それぞれで受賞歴を誇るドイツの名匠ファティ・アキン監督が、ダイアン・クルーガーを主演に迎え、突然の悲劇で家族を奪われた主人公の女性が絶望の中で下す決断を描いたドラマ
ハリウッドはもちろん、フランスなどヨーロッパ映画でも活躍し、英語、フランス語、ドイツ語を操るダイアン・クルーガーが、ドイツ語を使った演技に初挑戦し、2017年・第70回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した
《物語》
ドイツ人女性カティヤ・イェッセンとトルコ系移民のヌーリ・シュケルジは学生時代に出会い結婚、その後にヌーリはトルコ人街で在住外国人を相手にコンサルタント会社の事務所を経営し、カティヤは経理を担当し、息子のロッコは6歳になり幸せな日々を送っていた
事務所にロッコを預けて友人のビルギットに会うために出掛けようと外に出ると、事務所の前に新品の自転車に鍵も掛けずに離れる女性がいた
夜になって帰ってくると事務所付近にパトカーが止まり人だかりで通行止め、警官は爆発事故だと説明、思わず走り出したカティヤの目に入ったのは焼け焦げた瓦礫の山の事務所
間もなくヌーリとロッコは遺体となって発見された、警察の質問はヌーリは熱心なイスラム教徒だったか、政治活動はしていたか、等でカティヤはどちらも無関心だったと説明
カティヤは事務所の前に新品の自転車を鍵も掛けずに止めた女に声を掛けて目が合ったと説明、その自転車の荷台にはプラスチックの箱型のボックスが載っていたと
カティヤは知り合いの弁護士のダニーロに協力を求めて犯人は移民排斥を主張するネオナチの仕業だと訴えるが警察は過去に犯罪歴のあるヌーリが闇社会と繋がっていてそのために狙われたと考えている
どうしようもない気持ちのカティヤはダニーロに薬物をもらった、葬儀が行われた後にカティヤは薬物を吸うとそこに警察の家宅捜索が入った、ヌーリに前科があったためだ
ヌーリを犯罪者扱いする警察に絶望し、自殺を図ろうとしたカティヤだったがダニーロからの電話で容疑者が逮捕されたと知らされた、カティヤの睨んだ通りネオナチの夫婦で妻が自転車の女だった
裁判が始まるがネオナチのグループは夫婦のアリバイを証言し、カティヤの目撃証言も薬物が見付かったことで受け入れられず容疑者は釈放となった
カティヤは自分のやり方でこの苦しみの日々を終わらせることを誓う
《感想》
この作品を観るまでは、ネオナチの存在は知っていたのですが活動などは全然知らなかったんです、ドイツ警察の戦後最大の失態と言われるネオナチの連続テロ事件に着想を得ています
警察の初動捜査の誤りから10年以上も逮捕が遅れて、その間にもテロや殺人が繰り返されていたのです、本作はその理不尽な暴力で被害者の遺族にスポットを当てています
家族を奪われて捜査や裁判の過程によって更に心を引き裂かれます、どんな裁判でも被害者なのに更に酷い質問をされたりしてまさに引き裂かれるようです
そのカティヤを演じるのが、「マリー・アントワネットに別れをつげて」のダイアン・クルーガー、本作はゴールデングローブ賞の外国語賞を受賞、カンヌ国際映画祭では主演女優賞を受賞、監督いわくダイアン・クルーガーなしではこの映画はなかったと
監督は世界三大国際映画祭すべてで主要賞受賞経験を持つファティ・アキン、自身もトルコにルーツを持つ監督ならではの思いが本作には込められているそうです
本作では自転車に取り付けた肥料と灯油と釘の爆弾でヌーリとロッコが殺されてしまいます、体はバラバラになり全面には釘が刺さって傷だらけでと監視官が説明するのですがカティヤは聞いてられません
容疑者の夫の父親は警察に通報して逮捕されたんです、父親は息子がヒトラーを崇拝するネオナチだと気付いていたのですがこんな事件を起こすまで言えなかったんです、親に謝罪させるしんどいシーンです、その後に外で一緒にタバコを吸うんです
ネオナチはドイツ人こそ世界最高の人種で移民などで血が汚されることを懸念、なので移民を抹殺しているんです、ヨーロッパの作品ではこの移民をそういう理由で排除する内容がよくあります
やはりヨーロッパは血族を強く気にしているのか、国が移民を認めているのに国民の中ではそれを認めないネオナチのような人がいるようです、アメリカでもトランプのように白人優位主義のような人も多いですからね
話は逸れましたが容疑者が釈放されてからカティヤの物語は始まるんです、それは復讐なのですがやはり葛藤もあります、同じような人殺しに成り下がるのか?それとも、このラストにはいろんな考えをしてしまいますね
突然、最愛の家族を奪われた女、絶望の中、彼女がくだす決断とは それが『女は二度決断する』です。
この映画を観ないと知らなかった世の中の事がわかりました、世界って残酷ですね