『不連続殺人事件』
1977年 ATG
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 曽根中生
原作 坂口安吾
脚本 大和屋竺/田中陽造/荒井晴彦
撮影 森勝
音楽 コスモスファクトリー
出演 瑳川哲朗/夏純子/水原明泉/福原ひとみ/金田龍之介/泉じゅん/田村高廣/桜井浩子/内田裕也/内田良平/小坂一也/殿山泰司/初井言栄/伊佐山ひろ子/石浜朗/楠侑子/桑山正一/武藤章生/梓ようこ
《解説》
日本推理小説史上最高の傑作〈坂口安吾〉×伝説の監督〈曽根中生〉!
人間心理への鋭い洞察と見事なトリックで日本推理小説史上不滅の名作といわれる坂口安吾の同名小説を映画化、監督は数々の異色ロマンポルノを発表し他の追随を許さぬその独特な世界観で熱狂的なファンを抱え、約20年間の失踪の末に突然その姿を現して話題となった曾根中生
70年代に活躍したプログレバンド、コスモスファクトリーによる不吉な音楽、出演者たちの怪演と多数登場する奇人・変人たち、そして曾根監督ならではの不穏な空気、本作は異様という言葉が最もしっくりくる、世紀の改作である
《物語》
昭和22年夏・東京、終戦直後の混乱期にとある地方にある財閥・歌川多門の豪邸に使用人を含めて29人の男女が集まっていた
いずれも元夫婦や元愛人など愛憎関係にある十数人が招待されたのだ、その内の10人は多門の息子の一馬によって招待されたのだが一馬が招待状を出していない者にも招待状が届き、誰かが偽造して招かれざる者もいる
初日の夜には何かが起こりそうなパーティが行われた、翌朝に流行作家の望月王仁が殺されていると一馬の異母妹の珠緒がみんなに知らせ、警察が到着
胸に短刀が刺されていたが部屋に女流作家の宇津木秋子のライターがあったことから秋子が疑われが、一馬の妻あやかの靴の鈴がベッドの下に落ちていた
多門の妾だった京子の夫の小説家の矢代才兵と一馬は警察に協力し、友人の探偵の巨勢博士も到着、歌川家一族の複雑な血縁関係を説明した
郵便受けに手紙を入れられていた、「お梶は誰に殺されたか?九月十日が宿命の日」という文だった、お梶は珠緒の母で一馬の義母で去年に心臓の病で亡くなったが何故か一馬が毒を盛ったと噂が流れた
そして珠緒が殺され多門は珠緒を恨んでいるのは一馬だと才兵と京子に打ち明ける、一馬は噂を流したのは珠緒だと思っているからだ
そして一馬の従妹である千草が敷地内の森で絞殺され、詩人の内海明が部屋でメッタ刺しにされて殺されていた
戦争中の数年間は歌川家に疎開していた人々が今回集まったのだ、そこでは想像を絶する男女の淫靡な性生活が繰り広げられていたのだ
三夜連続の殺人事件の後、一週間は何事もなく過ぎたのだが一馬の誕生日8月26日に異母妹の佳代子と多門が毒殺され、同時に異なる場所での殺人に警察は何の手掛かりも証拠もなく不連続殺人事件と言われた
その十日後に宇津木秋子が殺された、そして6日後の9月10日、宿命の日がやって来る
《感想》
凄く登場人物が多くてその人間関係を覚えるのが大変でした(笑)、主人公の1人でもある歌川一馬は画家の土肥光一の妻を金で買って妻としたんです
なのに土肥光一も招待されて一馬の妻のあやかと当然仲は悪いです、だって金で売られたようなものですからね、でも財閥に嫁いだので結果オーライなのかも
でもこの土肥光一を演じるのが内田裕也なのであやかと再会した途端に羽交い絞めにして「久しぶりに可愛がってやる」って嫌がるあやかの体を触るんです
内田裕也は裸にジャケットだったりサスペンダーだけだったりと奇抜なファッションと破天荒な性格でトラブルメーカーなんです
一馬の父親の多門は昔の地方の財閥にありがちな妻を持ちながら妾も数人いる存在なんです、一馬は最初の妻の子で珠緒は二番目の妻の子で佳代子は使用人をおもちゃにした末に生まれた子なんですが、一馬は佳代子と近親相姦なんです
一馬の友人の矢代才兵の妻の京子は多門の元妾で才兵とカケオチして夫婦となったんです、一馬がどうしても夫婦で来てほしいと招待されたのですが当然ですが京子は気が進まないんです
その血縁関係の複雑さと招待された芸術家たちが奇人変人でインパクトも強烈なんですが覚える前に殺されたりしてね、土肥光一以外はテロップで名前と職業が出るだけなのでどんな芸術や作家なのか分からないままですが仕方ないね
犯人は意外な人物なのですが、予定外の殺人もしなくてはならなくなり、殺人の動機などが掴みにくくなって警察の手を焼きます、この辺りは「犬神家の一族」なんかに通ずるとこかな
殺人事件に挑む名探偵が登場します、29歳ながら人間観察に鋭い巨勢博士、彼は矢代才兵の友人なのですが一馬の招待状で招待されたのですが一馬が書いた文とは違っていて巨勢は事件を仄めかされて呼ばれたんです、まったく舐められたもんです(笑)
山奥の別荘に集まった29人の男女がおりなす異様サスペンス大作! それが『不連続殺人事件』です。
なかなか役者のテンションが高くて舞台のようで飽きさせません、ラストは探偵が登場人物を集めて解説する例のヤツです(笑)